第59章 風待ち月(8)
「こ、こんなの食べにくいっ///」
家康の脚の間にすっぽり収まった身体。しかも背中も密着してるし、腕は腰に回されたまま。
「ひまりが、三成入れるから悪い」
(だからって、この体勢は恥ずかし過ぎる///)
「おい、家康。良い加減にしろ」
政宗は珍しくちょっと怒ってて、
「家康先輩、食べ終わったのならシートから出て貰えます?」
「やだ。なら、三成が出て」
三成君の笑顔が一瞬微かに、崩れた気が……。
「ひまり。食べないんなら、俺が食べるよ」
「た、食べます///急いで食べます///」
大好きな卵焼きの味もわからないぐらい、猛スピードでお弁当を口の中に、詰め込む。
「ぷっ。ハムスターみたい」
(誰のせいよ!///)
ひたすらもぐもぐと口を動かす私に、家康は吹き出しながらお茶を取ってくれる。
優しいのか意地悪なのか、ほんと良くわからない。
「三成。お前、後で覚えてろよ」
「何で私なんです?家康先輩の方では?」
「お前が発端だろ!」
(ゆっちゃん!助けて〜〜)
珍しく、言い合いをする二人の横でずっと静かにしていたゆっちゃん。
お弁当をゆっくり食べながら、視線は秀吉先輩に瞬きもせず向けられていた。
「っと、ムカつく……」
そんな様子を遠目から見ていた、築城。ブスッ!と音を立てフォークでおかずを突き刺した彼女の手は、ワナワナと震えていた。
(何なの!あの女……っ!)
家康の間にちょこんと座り、後ろから抱き締められ、顔を真っ赤にしてお弁当を食べるひまり。
一見、恋人同士のような二人。
(家康君に釘刺されたとは言え、やっぱり許せれない!)
好きな男に忠告され、暫くは大人しくしていた築城。しかし、限界だった。