第59章 風待ち月(8)
山頂に辿り着いた私達は、すばらしい眺めと登りきった達成感を堪能しながら、お弁当を食べ始めた。
「ひまり先輩、ご一緒しても構いませんか?」
「あっ!三成君!私は全然構わないけど……」
「俺は無理」
家康はばっさり一言。
でも、私が気にしているのは家康のことじゃなくて……。
「三成君〜私達と食べようよ〜」
「こっちのが見晴らし良いし!」
手招きする女の子達の集団の方。
折角だから、一年生同士のが良くない?と私が訊くと、
「彼女達とは、明日でもご一緒出来ますから」
「あっ!そっか!私達、一日早く帰っちゃうからね!」
はい。と絶景をバックに笑う三成君。本当に天使みたい。その密かな呟きは、隣にいた家康に聞こえたみたいで、
「どこが。三成は天使じゃなくて、ただの腹黒」
「また、そんなこと言って!ほら、三成君ここ良かったら座って?」
私は横に詰めて、隣のスペースを少し空ける。けど、私達が座って居たのは四人用のシート。五人が座ろうと思うと流石に窮屈で。スペースが少し足りない。
既にお弁当を食べ終わっていた家康に、もうちょと寄って貰える?とお願いをしてみる。すると何を思ったのか横じゃなくて、後ろに下がり
「はい。どうぞ」
そう言って、自分の脚の間をポンポン叩いた。え?と首をかしげると、私は腰を掴まれそのスペースの中に、引き込まれ座らされた。