第256章 『一周年記念作品』学園祭♡一日目(後編)
夕方___
体育館の会場から、教室に向かって生徒達はまばらに歩いて行く。そんな中、最後まで中にいた六人はわいわいと豪華景品について話していた。
「まさか、豪華景品が万年筆とはね」
「だから、恋も勉強も下克上だったんじゃないかしら?」
「ふふっ!この万年筆!一本一本職人さんが作った特注品みたいだよ!」
ひまりは優勝して貰った桐箱からピンク色の石が埋め込まれた万年筆を取り出して、嬉しそうに笑う。見た目からして高級そうな素材だ。流石、信長の目利きした品である。
「家康のは翡翠石か」
「政宗先輩。これから一週間は戦国武将とお呼びしなければいけませんよ?ですよね?戦国武将さま?」
「……頼むからその呼び名やめて。三成に呼ばれると虫唾が走るから」
「あれ?これ忘れ物かな?」
ひまりはふと、昇降口にある落し物箱に入っていた万年筆に気づく。他の五人もその声に反応して後ろから集まった。
「この万年筆。……確か、自称いっちゃんとか言う方が使っていましたよね?」
「そうそう。出が悪いのか何回も縦に振ってノートにこれで何かを書いていたわよね」
副部長はコンテスト最中に見たことを思い出しながら話すと、ひまりは辺りにいっちゃんが居ないかキョロキョロと探し始める。しかし、コンテスト終了後には姿を消していたのだ。
「私、探してくる!きっと大切な物だろうからっ!」
「……ほっときなよ。大切な物なら探しにくるかもしれないし。それにもうインク出ないんでしょ?それ……」
家康はそう言って今にも走り出そうとするひまりを止めるが、グランドまで念の為に見てくると言われ渋々同行しようとするが……
ぶつぶつ言っている間に、既に走り去ってしまう。
「っとに。……お節介」
「そうゆう所も引っくるめて、好きなんだろ?文句言うな」
「先生には帰りのホームルーム遅れるって言っといてあげるから!早く追いかけなさいよ!」
「言われなくても、そのつもり」
弓乃にバシッと背中を叩かれ、もう一度靴に履き替えて家康は昇降口を後に。副部長は「素直じゃないわね〜」と一言零しながら、参加賞に貰った映画館のチケットを見て、折角だから今度の休日に六人で行かないかと、提案を始めていた。