第255章 『一周年記念作品』※告白シュチュエーション③
最初は何で掴まれたのかわからなくて、呆気にとられていると……
「きゃーっ///」
あいなちゃんの悲鳴が上がるのと同時に、背中に固いものがぶつかった。
ドンッ!
「……あんた。名前は」
顔の横に押さえつけられた自分の手。
視界に迫った端正な顔立ち。距離が近すぎて思わず聴こえてしまいそうな鼓動が鳴った。
鐘音みたいに、大きく一つ。
「……聴こえなかった?」
「……な…名前?……私の?」
突然のことで目をパチパチさせていると、無表情だった顔が途端に柔らかくなる。
「ぷっ、……他に何があるワケ?」
急にこんなことされて、目の前で軽く拳を作って小馬鹿にされたみたいに吹き出し笑いされたのに、何故か嫌な感じがしなくて……
初対面じゃないみたい。
「姫宮…ひまり……だよ?」
おずおずと答えると……
「………ひまり?…ふーん…」
ふーん?
それだけ?
自分から名前を聞いといて、それはちょっと酷い。そう思って、口を開きかけた時。
サラッ……
頬に垂れていた髪を丁寧な手付きで掬われ、くすぐる様に肌を滑りそのまま左耳に。
そして……
「……徳川家康」
剥き出しになった耳に、
ボソッと落とされた声。
「……彼氏候補の名前。……覚えときなよ」
「…彼氏…候補?」
ゆっくり横に動いた口元。
少し赤らんだ目元と眩しい笑顔がアンバランスで……
(…えっ///)
熱くなる頬。
予感めいた高鳴りと……
「明日から、たっぷり教えなよ」
あんたの事、色々。
心の中に名前もわからない感情が落ちて、小さく震えて……
「………予約しとく」
柔らかい感触と、啄む音。
距離なんて一切なく顔が近づいてきたと思ったら、ごくあっさりと唇が重なった。
「きゃーっ!きゃーっ///」
「〜〜〜〜〜〜っ//////」
あいなちゃんの悲鳴と私が自分の唇を押さえたのが、ほぼ同じタイミング。
明日から、
私の学園生活の世界が反転しそうな……
そんな出逢いだった。
〜fin〜