第255章 『一周年記念作品』※告白シュチュエーション③
目が合った二人___
『空中でぶつかった視線と視線。二人は、そのまま時間が止まったように動かなくなった。まるで、この時を待っていた。そんな瞬間。家康は熱いものを喉奥から胸へと運べば、ひまりは逆に込み上がる何かを押さえるように、胸に手を添えた」
目が合った。
知らない人。
私服姿で、一番後ろの席に座って居た男の子。
無言のまま、お互いが同時に目を見開いたことだけは分かった。
「え?……ひまりちゃん。私達のクラス此処で合ってるよね?」
あいなちゃんの言葉はちゃんと耳に入ってくるのに、返答が出来ない。
ドキドキ、ドキドキ……
何これ……。
無意識に押さえた胸。
押さえた途端に心拍数が上がって、衝撃に似た何がその中に落ちた。
(胸が熱い……ふわふわして……何だか落ち着かない……)
視線が固定されまみたいに、
男の子に張り付いて動かない。
お日様みたいな明るい髪。
光の加減で深みや色が増す翡翠色の瞳。
「…………転校生」
明日からだけど。
形のいい唇がそう動いて、やっと時間が動き出した。片手の平の上に顎を乗せて、愛想が良い訳でもなくてどちらかと言えばぶっきら棒で、表情も無表情に近い。
(でも……綺麗な男の子……)
美少年。そんな三文字では片付けられないぐらい、静かな教室の窓際で溶け込んでしまう容姿。ドキドキが止まらなくて呆然突っ立っていると、隣にいたあいなちゃんに「転校生だって〜」腕を揺すぶられてようやく「う、うん」と返事をすると……
カタンッ。
転校生の男の子が立ち上がる。
背筋が綺麗に伸びた立ち方。
椅子を引く動作、全然荒っぽくなくて……
一つ一つがきちんとしていて、
育ちが良さが伝わる。
カツカツ……
こっちに向いて歩いてくるのを見て、ハッとする。
(ど、退かなきゃ!)
扉の前なのをすっかり忘れていた。
私は慌てて足を横に一歩移動して、あいなちゃんとの間に道を作ると……
パシッ!
突然、転校生の男の子に右手を掴まれた。