第255章 『一周年記念作品』※告白シュチュエーション③
ナレーション___
『早朝の教室。まだ誰も登校していない室内は広くガランとしてして、廊下の歩く足音、グランドで行われている朝練の掛け声。それさえも子守唄に変えてしまう程、心地良い場所だった。しかしある席で、くしゃりと音を立てたお日様色の猫っ毛が揺れる……』
〜もし、初対面で一目惚れをしたら!?〜
窓際の一番後ろの席。
俺は明日から、この戦国学校に通う。その為、朝一で職員室に行き転校の手続きだけ済ました。予定ではそのまま帰るつもりだったけど……特に用事もないし下見がてら教室に。
取り留めない普通の朝。
高校二年の秋。
親の都合での転校は慣れてるし、心境の変化はこれといってない。俺からしたらただの学園生活。場所が変わろうが別にそれ以外は変わんない。
(まぁ、一応。これで最後っぽいけど)
多分、卒業するまでは此処に通うはず。肩肘付いて、窓を見ながら、ただそんな事を考えていた。
別に空を見ていた訳じゃない。
グランドを見ていた訳でもない。
強いて言うなら窓を見てただけ。
そしたら……
「あいなちゃんの髪、ふわふわ。柔らかいねっ!」
「私は、ひまりちゃんみたいなサラサラストレートに憧れてるけどね」
廊下から、
聞こえてきた二つの声。
ガラガラッ!
「おはよう!」
「って、まだ誰も居ないでしょ?……って、へぇっ!?」
窓ガラスに映り込んだ女子生徒二人。
反射的に俺の首は窓から背後に動く。
サラッ……
束なった絹の糸がゆっくり一本、一本に解けていくように……
「あ、れ……」
甘栗色の髪先が揺れ動く。
(っ!!)
一瞬で光色が俺の瞳に入り込んで、眩しくて目を塞ぎそうになる癖に、瞬きさえ勿体無いように瞼は上に持ち上がり……
「私服…姿…?」
澄み切った声音に突き動かされるように、視線が動く。
「……貴方は……」
大きな瞳と目が合った途端、
ドクンッ!
さっきまで正常に動いていたかさえ感じなかった心臓が急に弾け飛ぶように動いて、一遍に頭に熱が上がった。