第254章 『一周年記念作品』※告白シュチュエーション②
隣り合わせに座った二人___
『卒業。その言葉は、別れを意味するもの。しかし、教師と生徒の関係を終わりを迎える日にもなり……密かに想いを抱いてた二人。けれど、決してどちらも口にしなかったのは……立場上の問題。その境界線の手前で止まり踏み込めずにいた』
ガタンッ。
先生の手が急に隣から伸びて、私は思わず身を引くと椅子の足が大袈裟な音を立てた。
「どうかされました?」
「な、何でもありません」
何でもないことはないけど、先生の距離が近くて意識してしまったとは言えない。
クスッ。
「髪に埃らしきモノが……と、思ったのですが……埃ではなく、毛糸……の、ようですね」
「ありがとうございます。昨日、少し編み物をしていたので」
藤色の毛糸。
石田先生は指でソレを挟み「編み物……ですか?」私がするのが意外だったのか食い入るようにまじまじ見つめる。日差しに光るフレームのない知的な眼鏡の奥につい吸い込まれそうになって、慌てて視線を机に戻すとクリスマスまでにマフラーを編み終えたくて徹夜でしてしまったと話す。
「クリスマス……ですか?」
「はい。いつもお世話になっている方に……そ、の…贈りたくて」
しんみりとそう告げてしまったのは、プレゼントしたい人が先生だってまだ内緒にしておきたいから。
そうですか……
贈り物に……
右隣で私の声よりも、
トーンが下がった先生の声。
つい気になって首を横に動かすと、私が顔を急に向けたからか今度は先生がガタンッ!!!さっきの数倍大きな音を立てて……
ドンッ!
「せ、先生!大丈夫ですか!?」
「っ…、あはは…やってしまいましたね」
派手に床に尻餅をつく。
手を伸ばすと先生は苦笑いをして、申し訳なさそうに私の手を取る。
グレーのスーツ姿なのに、そのはにかんだ笑顔が妙に親近感が湧いて……
クスッ。
「先生は、大人でも同級生みたいな感じがしますね」
今度は私が笑う番。
早く起き上がって下さい。そう言いながら腕に力を入れて後ろに引っ張り上げようとすると……
グイッ。
「え?……あっ!!」
「……もしそうであれば、嬉しいですね。何も気にせず貴方に……このような形で触れれますから」
逆に引っ張られて、
私の体は先生の胸に目掛けて傾いた。