第252章 『一周年記念作品』学園祭♡一日目(前編)
幕がゆっくり開きながら……
『放課後の教室。夕日が差し込む窓際の一番後ろの席。日直にあたっていた同級生二人は、向かい合わせに座り日誌を書いていた』
流れたナレーション。
声は極めて柔らかく、調子は温かで、目を瞑って聞いているとあたかもそっと夢の中に導かれるような……そんな印象を持てる……
(つもりで!ぐるぐる眼鏡の私は抑揚を付けて語った筈!)
それはさて置き……
するとそこにはドラマのセット並み。いや、それ以上のクオリティ誇る本物の教室と見間違えるようなセットが壇上のステージに作られ……
「早く、書けよ。部活遅れっから」
「う、うん。もう少しかかりそうだから幸くん。もし、あれだったら先に行ってくれても……」
後ろ向きに座った幸村と、シャーペンを急いで日誌の上で走らせるミディアムヘアの弓道部マネージャーであるセナが、セットの中にいた。
(何やってんの…あいつ……)
中学の親友の登場に家康は盛大に溜息を吐いた。すると、隣にいた佐助がこそっと耳打ち。
「こんな感じの前置きはありますので安心して下さい」
どんな感じだよ!
と、突っ込みを入れたい所だったが告白シーンには無縁のように思える人選ミスに先に頭痛を起こしかけ、これまた盛大な溜息を再度、吐き出した。
観客席は観劇を見るように口を閉ざして、セットの中にいる二人に注目。
カチカチとシャーペンを数回、俯きながらセナがノックすると、じっーとその様子を見ていた幸村の口が動く。
「なぁ……お前さ。前の部長のことどう思ってんの?」
「え?前の部長って謙信先輩のこと?」
セナが顔を上げると、パッとバツ悪そうに幸村はそっぽを向き「あぁ」と短い返事をする。
「どうって言われても。あまり話したことなかったから…どうしてそんな事、聞くの?」
「……こ、この前、休日に一緒にいんのた、たまたま見たからよっ!」
するとセナは休日の記憶を辿り、それこそたまたま会っただけだと、買い物の帰りに見かけて挨拶と少し会話をした事を話した。