第252章 『一周年記念作品』学園祭♡一日目(前編)
さて、仕切り直しとなったファッション審査。
「では、家康さん。素晴らしい一言を」
佐助はお役目御免となった二人の意思を少しは引き継いでやろうと、広い心を持ちテンションを上げていく。ステージまで来た二人に立て膝ついて畏まり、マイクを向ける。もはや、それ以上、説明や言葉はいらないでしょう。
家康なら空気を読み、確実に決めてくれる。その想いで、一番の優勝候補者である意気込みと胸キュンに期待。
はぁー……。
何とも言えない盛大な溜息。
マイクなしでも拾えるぐらいなもの。
会場はまるで人っ子一人いないように感じる程、静けさに溢れかえった。それは、光秀が観客席に降りた二人の口をガムテープでぐるぐる巻きにしたからこそ、創り出せた静寂だ。
何か良くわかんないけど。
家康はまさにそんな顔をしながらも、隣でそわそわして「何で急に静かになったの?」と、状況を把握出来ずキョロキョロするひまりの腕を自分の方へと引き、胸の中にポスッと閉じ込める。
「優勝はどうでも良い。そんな事より……」
「えっ!な、何っ、何っ!?」
優勝はあくまでも眼中にないと前置きをしてから……腕で、見せたくない!と、主張するようにひまりの顔を覆った。
そして、
「……俺のひまり…じろじろ見ないでよ」
ちょっと拗ねた感じも含めながら、鋭い視線で観客席に向かって一言そう告げた。
「「「キャッー!!///」」」
観客にはツン!しかし、ひまりにはデレを全開にした台詞に女子の黄色い悲鳴が一気に会場である体育館で響き渡る。
「素晴らしい!まさに、ツン!デレ!」
佐助は目尻に何かを光らせ、何処からか唐草模様のハンカチを取り出すと拭った。
「……あの馬鹿」
「家康らしいな」
「希望通り、隈なく見てやるか」
審査員の三人は、
こぞって思い思いの言葉を口にする。