第252章 『一周年記念作品』学園祭♡一日目(前編)
扉が開いた瞬間、
耳を塞ぎたくなるような歓声に家康は少々うんざりしていたが、決して機嫌は悪くない。それは隣で手を繋いで、笑顔を振りまくひまりがいるからであろう。
ランウェイを一緒に歩く=俺の彼女だという証拠であり、家康にとっては都合の良い虫除けにも繋がる。
「ドキドキだね!」
(俺は違う意味でドキドキしてるけど)
緊張するドキドキと、高鳴るドキドキとでは意味が全然違う。
ふふっ。
心底嬉しそうにニット萌え袖で顎に手を添えられ、小さな顔が少し隠れるだけで家康の視線は釘付け。
ゆるゆるした巻き髪に、ベロア素材のピンクリボンを左右ランダムに付けたひまりの髪型は、家康のお気に入りだ。
そんな二人が恋人繋ぎでランウェイを歩けば、たちまち……
「ひまり〜可愛い〜」
「お似合いだよ〜!」
「くそっ、黙って萌えを楽しむしかねー」
「要らんこと言うなよー。徳川に睨まれるだけだぜ」
女子も男子も騒ぎ出す。
しかしある意味で一番興奮していたのは……
(あかん……)
(ドリーム万歳……)
ぽぉ〜っとして、すっかり実況中継も脳内中継も忘れ、二人を見つめる司会者だろう。佐助がゴホッゴホッ、咳真似して合図を送るが反応せず、世話焼き秀吉がトントン、机を小突いてそれとない合図を送るが微動だにしない。
しかし……
ひまりが横を向いて「ちょっと恥ずかしいね?///」と、必殺萌え袖で上目遣いきゅんきゅん技を繰り出し、その仕草に見事に胸をどきゅん!と、打たれた家康がにやけそうな口元を隠そうと、着ていたハイネックニットの襟を、キュッと上に持ち上げた瞬間……
ごくっり!
変な喉音が鳴る。
「で、で、で、出ましたぁあ!頂きましたぁあ!きゅるん上目遣い、にやにや口元隠しー ーーー!」
「萌え襟、萌え袖ー!もう、そんなに萌えてどこ行くのーー!」
心中継が始まった。