第58章 風待ち月(7)
木造建てのコテージ。
その中に私達は荷物を置く。
一棟二十人部屋。
クラスの男女別に分かれて一棟ずつだから、全学年の全クラス分を考えると膨大な数のコテージがいるわけで……。
改めて戦国学園の凄さを知る。
一年生の時は、学年で場所が分かれていたから全学年一緒なのは今年が始めてだった。
「噂だと、このキャンプ場!織田先生が所有してるらしいよ!」
「えーー!!流石セレブ!」
そんな会話を耳に挟みながら、織田先生ならあり得るかも。と、驚きよりも先に妙に私は納得してしまう。
「ねぇ!ひまり!」
「ん?なぁに?」
クラスの女の子達が急に私の周りに集まり、
「夜は恋バナするから、ちゃんと徳川君の話。聞かせてよ!」
「へ?家康の話?何の?」
「付き合ってる話よ!告白はどっちからしたとか気になるじゃん!」
「ちょ、ちょっと待って!私と家康は付き合ってなんか……っ!」
皆んなはニンマリ笑って詳しくは夜聞くからと言って、各自荷物の整理を始めてしまい……。
(あの相合傘の一件から、誤解されたまま。ちゃんと今日は、訂正しておかないと!)
家康の好きな子の耳に届いたら、それこそ大変。荷物の整理をしながらそんな事を考えていた時だった。
「姫宮、いるか?」
「明智先生!」
「お前、保健委員だったな?一棟ずつに備える、応急処置一式。取りに来い」
私は急いで準備を終わらせ、先生の後ろについていく。
仕事意識が高いのかな?野外活動の時でもちゃんと明智先生は白衣着てる。
ヒラヒラと白い衣のように風に靡かせ、颯爽と歩く後ろ姿。
やっぱり絵になる。と、改めて思う。
「先生は、ヒメボタル見たことありますか?」
「何だ、唐突に」
応急用に張られたテントの下で、救急箱の中身をチェックしながら、この辺りの山奥で見れるとチラッと聞いたので。と、答える。
「ヒメボタルか。一、二度はある」
「綺麗でした?私、見たこと無くて」
「他の蛍に比べて小ぶりだが、発光が小刻みで早くてな。なかなか風情がある」