第250章 天邪鬼の愛〜中紅花〜最終章
青いバイクが走りだした頃。
「……失礼する」
赤い車も学園に向かって走り出す。
(あれ?あのナンバーって、織田先生の車?)
駅から自宅までの道のり。
ヘッドライトの光と、音に気がついて道の端に寄った二人。
しかし、自分たちがいる方には来ずに手前の角を猛スピードで曲がった車。
ひまりは視線で追ったが、暗くて車体の色までははっきりとは見えなかった。
「ねえ?家康?さっきの車……」
「…………ん?」
いつの間にか携帯を弄っていた家康。
(最近、携帯を見てるの多いよね?)
少しざわつきかけた胸。
しかし、日頃から多忙な家康。色々確認することが多いのかもしれないとひまりは特に気にもとめず、繋いだままの手を「何でもない」というように、ぎゅっと握りなおして歩き出した。
「また、夜メールする」
「忍者ごっこは禁止だからね?」
キスされた額を押さえ手。ひまりは念を押して、またね!と、今度はその手を顔の横で振ると家の中に。
ただいま〜!玄関で元気よく声を出して靴を脱ぐ。いつもなら、出迎えてくれることが多い母親。不思議に思いリビングに行くと、両親が神妙な顔つきでダイニングテーブルで向かい合わせ座っていた。
客人が来ていたのか二人の前には、空になったコーヒーカップが一つ。
「あ、あら!おかえり!」
「さ、撮影はどうだった?夕飯食べながらゆっくり話を父さんに聞かせてくれないか?」
ひまりの気配に気づいて、慌ただしく動き出した両親。
「う、うん。ちょっとだけ食べて来たんだけど……誰かお客さん来てたの?」
そ、それはだなっ!父親が口ごもれば、キッチンに立った母親がちょっとね、と落ち着いた声で答えた。