第250章 天邪鬼の愛〜中紅花〜最終章
戦国学園___
学園長室の扉が開く。
すると、キィーっと椅子を引く音。
「両親に話を聞いた。やはり、ひまりは……」
「こちらも色々と調べました。……来週の新月を待ちましょう」
信長は佐助の言葉に頷く訳でも、何かを告げる訳でもなく、ただ手の中にある「花ノ天女神社」と刺繍された桃色の守りを見つめた。
ひまりの両親から、
預かって来た大切な守りを。
花ノ天女神社___
社殿の中にある一室。
信康は、年老いた祖父を献身に看病していた。
「じじ様、薬の時間です」
「ゴホッ…ゴホッ…すまんの…信康には世話になって…ばかり、じゃ」
「……世話になったのは俺の方です。大事に育てて下さったではありませんか」
感謝しています。
信康は外に出ると祠に行き、前髪を搔き上げる。鏡の中で成長して行く花に向けた柔らかい眼差し。
「後、もう少し……」
手の中で何かを強く握り、
うわごとのようにそう呟いた。
『宿命』を受け止めるのに、
時間は必要だった。
それぞれの想いが三日月のように消えそうになった、夜の十時頃。
コンコンッ。
ひまりの部屋の
ベランダに現れたのは……
忍者か?
慌てん坊のサンタクロースか?
それとも……
ギシッ……
「ちゃんと持ってきたから」
余分に。
健全な高校生の家康か。
「……ぁっ……」
「ほら、声。塞いであげる」
ベットの上で昼間の熱を再び。
ーーサンタさんって。もう5年生なんだし……
ーーサンタさんはいるもんっ!
小学生の頃、布団に潜り込んでサンタを待つ計画を立てた二人だったが……
数回、鳴ったノック。
「ひまり?さっきベランダから音がしなかったか?」
「し、してないよっ///」
まさにデジャブ。しかし、家康が隠れたのはベランダではなく……
(……かなり幸せなんだけど)
ひまりの香りが漂う布団の中。
くまの縫いぐるみのパーカーに余分に持って来た物を一つ忍ばせると……風呂上がりのほんのり赤みのあるピンク色の肌に唇を寄せた。
『宿命』
では、『運命』と『天命』は……
心の花……
次は、何色に染まるのか。
〜天邪鬼の愛〜中紅花〜fin〜