第250章 天邪鬼の愛〜中紅花〜最終章
お洒落な、
アクセサリーショップの入り口付近。
「小春川にでも変わって貰って」
「そ、そんな無理だよっ。途中で」
「別に良いですよね?途中で変わっても」
「くっ、くっ。それは無理だな。俺の愉しみが減る」
「あっちこっちに目を配るのも大変だな、家康?」
本人達は気づいてはいないが、夜の8時過ぎでも人通りが多い休日。四人の容姿は目立つ。
「おい。あれ、家康達じゃねーか?」
「ほんとだっ!ひまり〜〜!!」
信号待ちで停車していた一台のバイク。政宗は道路の端に寄り、弓乃はヘルメットを取ると大きな声で名前を呼び、手をブンブン頭上で振った。
まさか、この後。
家康にいきなり明日から保健委員を変われと言われるとは、露知らず。
同時刻___
スタジオでまさにそのモデル……月夜が撮影を終えた頃だった。
「こんな短時間で流石ね」
「どーも。早く帰って寝たい」
パサッと被っていた黒いフードを外すと肩を軽く動かして、大欠伸をした月夜。その姿を見て、今人気急上昇中のモデルとは誰も思わないであろう。
「貴方、学校では真面目くんで通してるんでしょ?」
「真面目くん?じゃないけどただ、ひっそりとねー。担任の織田先生も店のイメージモデルする代わりに居眠りしても見逃してくれるしさ」
廊下側の一番後ろの席。
それは、信長の配慮でもあった。
「好きな子でも出来たら、その無気力な所。変わるかもしれないわね」
「……いるよ。好きな人」
冗談で言ったつもりだったマネージャー。スケジュールを確認していた手帳を危うく落としかける。
「ダ、ダメよ。この業界で恋愛はご法度だからね」
「……別に想うぐらい自由じゃない?……まだ、正式には付き合ってないみたいだしさー」
月夜は深紫の髪を適当にかき集めると、服の袖に隠していたゴムで一つに後ろで束ね、結んだ。