第250章 天邪鬼の愛〜中紅花〜最終章
高級感あるシンプルなシルバーチェーンのトップには立体感ある三日月シルエットのモチーフ。その中で揺れる雪結晶に埋め込まれた、一雫のダイヤ。
そのネックレスを指を絡ませるように持ち、モチーフの部分にぽってりとした唇を寄せ横を向いた、美少年。月が湖面に影を落とすような、輝きはあるのにどこか無気力で透きとおった女の子みたいな顔立ち。
本名かどうかは分からないけど……
まさに「月夜」って名前がしっくりくる。
近づいて、ポスターをもう一回じっくりと見て「やっぱりそうだよね?」と、私が横に顔を動かすと家康は顎に手を添えて「月夜…そう言えばどっかで……」眉間を真ん中に寄せ、頭の中で何かを探るように呟く。
すると会話が聞こえていたのか、私達の背後にはいつの間にか秀吉先輩と明智先生が立っていて……
「何だ?お前ら知らないのか?」
秀吉先輩はお芝居の最中かと思うぐらい大袈裟な動作で数回、家康の肩をぽんぽんと叩けば、明智先生は私の頭に手を置いて、
「くくっ、秀吉。言うなよ。……次、委員会で集まった時のひまりの反応が、愉しめなくなるからな」
盛大に喉奥を転がした。
「え?委員会??」
「………月夜…つき…や……まさかっ!」
委員会と今の話が全く繋がらなくて、疑問だけを頭の中で一人散りばめていると、家康は何かが繋がったようで喉に引っかかったものを吐き出すように大きめの声を上げる。
「どうやら……」
「家康は気づいたようだな。これで、ますます愉しめそうだ」
「わぁっ!」
突然、この世の終わりみたいな顔をした家康に肩をガシッと捕まれてビックリして悲鳴を上げた私。
けど……
「保健委員、交代」
「へっ?交代?」
いきなりそう言われて、
今度は間抜けな声が出る。