第250章 天邪鬼の愛〜中紅花〜最終章
やめて下さい。
そう不機嫌そうに家康は言って頭を動かすけど、ちょっと嬉しそうにも見えるのはやっぱり相手が秀吉先輩だからかな?
「ちゃんと踊りの練習してるんだろうな?部長として部員を平等に見てるか?俺の日頃の忠告も意地はってないで聞くんだぞ?」
「いっぺんに言わないで下さい。……どれも言われなくても……」
クスクスッ。
つい笑ってしまうと繋いでいた手が離れ、ほっぺを抓られる。
「わ、ら、わ、な、い」
「ひやぁーい」
口を大きく開けて発音をオーバーにする家康が本格的に拗ねる前に軽く返事。
その後、私は秀吉先輩と明智先生に買い物ですか?と、聞くと……
「一度は顔を出しておこうと思ってな」
「秀吉が一人では入りづらいと言うのでな、俺は付き添いだ」
違う、明智先生が勝手に。
何を言っている?流石に用もないのに一人では……と言っていたのは誰だ?
否定する秀吉先輩を、揶揄う明智先生。
(生徒と先生の立場でも、少し違う関係に見えるのは私だけかな?)
特に理由がある訳でもなさそうな二人の口振り。オープンしたから一度来て見た……そんな感じかな?と、思っていると隣にいる家康がじーっと店舗の方を見ているのに気がついて、私はその視線の先を首を傾げながら追う。
入り口に、
張ってある一枚のポスター。
月のジュエリー特集。
可愛い〜!普段の私なら真っ先にそう叫んだと思う。でも、ジュエリーを手に持ってそれにキスをするポスターモデルのドアップが目に飛び込んだ瞬間……
「あっ!もしかして!さっき会ったモデルの男の子!?」
私は口の前で手をパーに広げて、そのポスターをまじまじと見つめた。顔は俯いててわからなかったけど、髪色も雰囲気もエレベーターで出逢った男の子にそっくり。それに、右下に印字されたイメージモデルの所には『月夜』って書いてあった。