第58章 風待ち月(7)
野外活動当日___
急にピタリとなくなった嫌がらせ。それが不思議で少し不安に思いながら、楽しみしていた野外活動を迎えた。
バスはどんどん山に向かって走る。
車内は楽しげな声が上がり、大盛り上がり中。
お菓子交換しながら、遠足みたいだね!と、隣に座るゆっちゃんと話しながら、後ろに座っている二人があんまり静かで、チラッと隙間から覗いてみる。
「「ぷっ」」
私達は同時に吹き出して、携帯を取り出し、パシャ。と一枚。
画面に、家康と政宗の寝顔。
しかも、仲良く頭をぶつけてて可愛い。
「待ち受けにしておこうかな?」
「やめときなよ〜!厄除けにもならない」
ゆっちゃんは私なら断然、秀吉先輩の弓を放つ横顔にするね!と、目を輝かせる。はいはい何度も聞いたよ、と笑顔で返事をしながら、携帯の待ち受けに設定した。
車内から見えた壮大な山。
雲ひとつない青空。
てるてる坊主をこっそり作った、効果あったかな?なんて、思いながら野外活動場所に近づくたびに胸が踊る。
「明智先生もお菓子食べます?」
「遠慮しておく。車内ではしゃぐのは、自由だが。後で酔ったとか言うなよ」
「酔い止め飲んで来たから、大丈夫です!」
明智先生は通路を挟んだ隣の席。
私の返事を聞いて、軽く笑みを浮かべた。スラリと長い足を組み、物静かに外の景色に視線を移す。
(明智先生って、何しても絵になるよね)
「貴様ら!勝手な行動する奴は、俺が容赦なく仕置する。肝に命じておけ!」
バスの一番前で仁王立ちした織田先生。
「「「「はっ!」」」」
何でこのクラスは、こんな返事の仕方なんだろう。ちょっと、不思議。
私はもう一度、後ろを覗く。
今度は携帯を家康の方にだけ向けて、パシャ。一人クスクスと笑い、今度意地悪された時用に大事に保存。
「ひまり……。か、くご、しなよ」
今の寝言だよね!
やっぱりずっと内緒にしておこうと、決心した。
バスが停車し、私達は二人を起こす。
「家康起きて!!」
「政宗もいい加減、起きなさいよ!」