第57章 風待ち月(6)
とりあえず政宗の電話終わるのを待っているしかなさそう。
再び手芸屋さんに戻り、ふと隣の雑貨屋さんに視線を向けた私。
店外に置かれたワゴンの中を覗き込むと、
(あっ!コレ!可愛い!)
その中から見つけたヘアピンを、手に取る。小さな三つ葉のモチーフが付いた、シンプルなデザイン。
手作り品の一点物みたいで、普通のヘアピンよりはちょっとお高い。
「う〜ん。この前、ゆっちゃんとお揃いでアクセ買ったばかりだし……」
欲しいけど、ここはグッと我慢。
「来月まで売れ残ってますように!」
「何一人でワゴンに喋ってんの?」
「ひやぁ!!」
背後から急に囁かれ、私は驚いて声を上げる。危うくワゴンをひっくり返すとこだった。
「すっごい顔」
「家康が驚かすからでしょ!」
ワゴンの中にヘアピンを戻し、家康に用事もう終わったの?と、尋ねる。
「……まぁね」
それだけ?
大した用事じゃなかったのかな?
「それより、早く帰るよ。お腹減った」
「う、うん」
政宗もちょうど電話が終わったみたいで、私達三人は人通りの少なくなった駅前を歩く。
この前、ゆっちゃんと待ち合わせしたショーウィンドウの前を通り、私は思わず足を止める。
「何だ?ウェディングドレスか?」
「五月の時は、洋風のドレスだったんだよ!今月は和風なんだ〜」
飾られた、着物のドレス。
真っ白じゃなくて、裏生地と襟元が赤色になっていて近代的な雰囲気の着物。花の刺繍が施された羽織が、またお洒落。
「ひまりは、どっちが着たいの?」
「へ?私?」
「お前なら、どっちも似合いそうだけどな」
「う〜〜ん。どっちも着てみたいけど……」
私は暫く考えた後、二、三歩二人より前に歩いて。
くるりと振り向く。
「旦那様になる人と一緒に決めたいから。だから今は未定だよ!」
まずはこんな素敵なドレスが堂々と着れるぐらい、強くて綺麗で素敵な女性になりたいから。
(嫌がらせなんかに負けてられない!)
「やばいね」
「やばいな」
「何が?」
「「一瞬で持ってかれた」」
二人は私の隣に来て、
「どっちも楽しみにしてる」
家康にほっぺた突かれて、
「脱がしやすい方にしとけ」
政宗に頭をポンポンされて、
(???)
私は首を傾げた。