第249章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(36)時を繫ぐルージュ編
次の瞬間には、
「ったく。……戦利品ぐらい置いてけ」
頭が真っ白になるような低い声が、近距離どころじゃなくて直接耳に触れた。
後ろから抱き締められ、
私より遥かに大きい体に包まれる。
「せ、せせせ戦利品!ってななな、な、何よっ///」
上擦り過ぎだしっ!って突っ込みたくなる自分の声。
(こんなに近いと心臓の音が聞かれてっ!)
口からは出ない癖に、
心で喋るのは素直さ全開の乙女の声。
コンプレックスの胸元に回された腕。そこにばっかり意識がいって、石みたいに固まっていると私の意思なく首が横に向く。
クイッ。
「……今日の所は、これで勘弁してやる」
弓乃……
次、来た時は覚悟してこい。
近づく蒼い瞳。
吸い込まれ……
ピクリとも動かなくなった体。
何度も塗り直したローズピンク色のルージュ。最初から色なんか付いてなかったように、呆気なく唇から消えた。
政宗の唇は私より少し硬い……
でも、キスの仕方は強引でも柔らかくて、ちゃんと優しいからほんとこっちの調子ばっかり狂わすから狡い。
「……送っててやる。我慢してやった分、一緒にいる時間ぐらい寄越せよ」
「はぁ、……っ……」
呼吸が乱れ、大きく上下する胸の前にいつの間にかガードするように交差していた自分の両腕。
覚悟してきた。
そう思ってたのは上っ面の私で、政宗は隠れた私までちゃんと見ていてくれた。
私の好きな人は、ただ強引な訳でも余裕ぶる訳でもなくて……
「……政宗」
「っ。…ばか、んな顔して煽るな……これだけは教えといてやる。……緊張すんのは、お前だけじゃねえ」
ちゃんと大事にしてくれてるみたい。
なんか悔しいけど、
それが政宗なりの愛情?なのかも。