第249章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(36)時を繫ぐルージュ編
『ローズピンク』
テレビ画面から響く爆音。
リアリティを追求した本格的なシミュレーションゲーム。ハイスピードで展開する白熱したバイクレースに自然とアドレナリンが吹き出して……
(じゃ!なくてっ!私に必要なのはさっ!フェロモンよっ!!)
リモコンを握りしめる手に力が入るのは、別に広くてがっしりした腕がカーブに差し掛かる度にあたるからじゃ……
「ないわよーっ!///」
私はそう叫ぶと、アクセルボタンをこれでもかってぐらい押す。すると、ゴールラインに向かって一直線に突っ込むローズピンク色の鮮やかなバイク。
「……甘いな」
「あーっ!!」
画面に映し出された数字の「2」を見て、がっくりと項垂れるように私はリモコンを握っている手を膝の上に置いた。
「まぁ、良い線いってたんじねえか?」
(日頃、弟達に鍛えられてる筈なんだけどさ……惨敗)
一勝も出来なかったし。
ちょっとは手加減してくれてもとか、今日は調子が悪いだけとか、可愛げない言葉をぶつぶつぶつぶつ言いながら、携帯に表示された時刻に視線を落とす。「まだやるか?」て声が近距離から聞こえて……
しないわよっ!
また、バクバクしてきた心臓の音を可愛げのない返事と一緒に吹き飛ばす。
部屋に入って、バカみたいに意識して百面相していた数時間前の私は呆気なくゲームをしている間に消えた。
(皆んなが絶対!政宗は手が早いからっ!とか、言うから……)
昨夜、睡眠時間を削って色々した覚悟も無駄足。まな板胸に悩まされ、デートも遅行。
そんな雰囲気とか一ミリもなかった。
キスも迎えに来て貰った時の一回だけ。
(やっぱ。魅力ないのかなぁ……………って///これじゃ私のがっ!うじうじ悩み出す前に帰ろうっ!)
四つん這いでテレビの前に移動してリモコンを片付け、カバンの中に携帯ポイっと放り込む。
「時間だしそろそろ帰る。………今日はそ、の…ありがと。……あ!帰りは一人でっ……」
大丈夫だから。
振り返らずにそう言って、リュックを掴んで立ち上がろうとした時。