第57章 風待ち月(6)
「なぁ。お守りってまさか部の全員に作ってるのか?」
「ううん。本当は作りたかったんだけど、流石に間に合わなくて……」
今回は大会出場メンバーの人達の分だけだと、話す。
「もちろん!政宗の分もあるから楽しみにしててね!」
「……あぁ。一応楽しみにしててやる」
「ふふっ!何それ?一応なの?……わぁっ!」
危うく人とぶつかりそうになった時、グイッと肩を掴まれて
「前見て歩けないのか?」
「ご、ごめんね!」
気がつけば政宗の片腕の中に、すっぽりと私は収まっていた。慌てて謝りながら身体を離すと、
「このままで良い。……危ねえから」
再び肩を引き寄せ、歩き出す政宗。
「何か、政宗ってサラッと紳士だよね!」
「ばあか。俺がこういうことするのは……お前だけだ」
え……私だけ?
ドキドキと早まる鼓動。
「また、そうやってからかうんだから!」
パッと身体を離し、私は肩に掛けていた鞄をぎゅっと掴む。胸の音を隠すように歩いた。
閉店前ぎりぎりに手芸屋さんに辿り着いた私は、急いで店内を見て回る。
お店の人に迷惑かけるといけないと思い、他の手芸屋用品に夢中にならないようにお目当のハギレだけ探す。
(えっと、着物のハギレは確かこの辺りに……あった!)
布がたくさん並ぶ棚の下に、ハギレコーナーを見つけた私はしゃがみ込み、三成君のイメージにピッタリの色を考える。
(瞳の色が藤色だから……コレにしよう!)
一枚だけあった、藤色のハギレ。
ちりめん素材でイメージ通り。
私はお会計を済ませた。
店をでると、外で待っていてくれた政宗の姿がない。
あれ?
どこに行ったんだろう?
キョロキョロと首を動かしながら、数メートル進むと携帯を耳に当て、何やら話し込む政宗の姿を発見。
「それは明日の朝、仕込む」
店からの電話かな?
邪魔しちゃ悪いよね?
(そう言えば家康まだかな?)
何か連絡来てるかもしれないと思い、鞄の中から携帯を取り出す。
着信もメールも無し。