第249章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(36)時を繫ぐルージュ編
ただ立って撮影するのも味気ないと、ピンと閃き提案する副部長。
「ねぇ!折角だから皆んなで手を繋がない?」
「あ!それ素敵ですねっ!ルージュ撮影のコンセプトの、まさに「時」を繋ぐにピッタリ!」
女の子二人はクスクスと真ん中で手を繋ぎ、ひまりは右手を伸ばす。
「流石、時先輩です。素晴らしい。そんな瞬間を私なんかが……っ!必ず素敵な思い出の一枚を!」
「もしかしてシャレのつもり?……はぁー……ってか、三成張り切りすぎ。嫌な予感しかしない」
文句はしっかり言いつつ、伸びてきた手もしっかりと握る家康。瞳を輝かせ、レンズを覗き込む三成。
「俺は場違いだから……」
「私と繋ぐのは嫌かしら?」
左手を差し出す副部長。
((俺らも!))
イタズラ好きの翠鏡と天鏡はにしゃりと笑い、左右に分かれる。翠鏡は家康の近くに、天鏡は信康の近くに。
「皆さん?ルート4は?」
「「え??」」
「「2」」
観念したように信康が副部長の手に触れた瞬間に降りたシャッター。
だったが……
「いけません!時先輩に触れて良いのはっ!……おや?足に何か絡まっ……」
「三成くん!コード!」
「あらら……流石、カメラマンさんね」
「やると思った」
「あはは……」
派手に床に転がった三成。
ふぅー……カメラマンと安心した長い息が静寂に一瞬だけ包まれたスタジオに笑いを起こした。
「ちょっと!これ!?」
「い、家康っ!あ、頭の上に耳があるよっ!信康くんもっ!」
「……三成。何したわけ?」
(後で、お仕置きだね)
写真に映り込んだ三角の尖った耳。その理由を知っているのは、左右に視線をゆっくり向けた信康のみ。
最後は三成も入り、フォトプロップスを片手に五人はポーズ。
「お疲れ様!」
永遠のように思えた、
撮影がようやく幕を閉じた。