第249章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(36)時を繫ぐルージュ編
その様子を……
スタジオ奥の壁に背中をくっ付け、セットの中で笑い合う二人を遠い目で見ていた信康。その両側には周りには見えないが、ふわふわ尻尾を揺らした翠玉と天鏡の姿があった。
シャッターを切る音の後、あ!家康の腕の中で短い声をあげたひまり。セットの中から飛び出して、カメラマンと編集長に何やら相談している素振り。
そして、カメラマンと編集長が頷くと「え?」「私達も」副部長と三成に向かって手招きをするひまり。
「皆んなで記念、記念!」
「良いかもしれないわねっ!」
セットの前で、
きゃぴきゃぴ騒ぐ女の子二人。
「でしたら、私に撮らせて貰えませんか?」
撮影側も思い出になるからと、三成はカメラマンを志願。破損して弁償するのが目に見えている家康。そんな思い出はいらないからと皮肉たっぷりに「やめとけば?」と、三成に忠告するが全く聞く耳は持たず。
「任せて下さい。皆さんの素敵な笑顔はしっかりと抑えますので」
「お前がカメラ持った時点で、俺から笑顔は消えるけど」
(ふふっ。仲良しさんだなぁ〜)
(だ……大丈夫かしら?)
にっこり笑う三成、あからさまに嫌な顔をする家康、果てしない勘違い?をしてニマニマするひまり、心配の二文字を浮かべた副部長。
そして、
「信康くんも記念!!」
「え……。俺は良いから仲良い皆んなで……っ!」
「信康くんも仲良しさんでしょ?ほらほらっ!行こう!」
いや、俺は本当に……遠慮する信康の背中を軽く押して、 セットの中に連れて行くひまり。その後ろからイタズラ好きな翠玉と天鏡が続く。
「では、撮ります。皆さん、ご準備の方は宜しいですか?」
全然……
ボソッと呟く家康の頬を抓り、これでもかと言うような元気よく返事をしてスマイルをカメラに向けたひまり。