第248章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(35)時を繫ぐルージュ編
前回の恋人ごっこ撮影。
今回の恋人同士の撮影。
「家康君。ぜひ前回と同様、ひまりちゃんに苺越しのキスぜひ、お願いするよ」
同じようで全然違う今の俺たちが、カメラの中に収められていく。
ポージングはさっきのまま。
俺は後ろ向きになった一人掛けソファの上に寄りかかるように座り、その前にひまりが立つ体勢。
スタッフがサイドテーブルの上に置いた、ホールケーキ。後で皆んなで食べるつもりなのか、かなり大きいサイズ。
そこから一つ、潤いのある大粒の苺を摘むと俺は口に咥え、細い腰の後に手を回して顔を近づけた。
「……ん」
「恋人ごっこじゃなくて本当の恋人同士になっても……///」
やっぱり、
ドキドキするのは変わらないね。
そんな俺の鼓動を動かすような台詞を言いながら、真っ赤な顔をしたひまり。
ルージュで潤った唇を薄っすら開け、
(……っ///)
長いまつげを揺らした後、
苺にキスする直前に目を閉じた。
(ドキドキしてんのは、お互い様)
ひまりの口の中に苺を押し込めながら、可愛いのも変わんないけど……って、言葉は苺を咥えてるから言えなかったって事にしておく。
「前の撮影の時、俺が何て言ったか覚えてる?」
苺を食べながら、「全く」そう顔に書いたようにキョトンするひまり。
そんな顔見たら俺は尚更……
「……無理。俺、ひまりが彼女だったら……」
絶対、意地悪するから。
全く同じ台詞を口にして、
ニヤリと笑った。