第248章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(35)時を繫ぐルージュ編
事の発端は、先日の昼休み前に行われた家庭科自習。
女子のマフィン作りだ。
勿論、ひまりは家康にあげる予定で愛情たっぷりで一生懸命作り、出来立てを食べて欲しくてラッピングはせず、お皿に乗せて運んでいたのだが……
「渡しに行こうとしたんだよ?ただ、……他のクラスの子に沢山貰ってたって聞いて……そんなに食べれないかな?…って」
小耳に挟み、
渡すのを迷ってしまった。
彼女としては複雑な気持ちだろう。
「甘いもの得意じゃないし……迷惑かな?……って」
ごにょごにょと言いにくそうにそう言って、指をくるくる回し、大きな瞳でチラッと見た後に目を伏せれば、家康は一瞬、お仕置きタイムを躊躇。
(……この必殺技。毎回、繰り出すのやめて欲しい)
甘やかしたくなる所をグッと堪え、
「貰ったんじゃなくて、勝手に机に置いてあったんだけど。俺にとったら、それが一番迷惑」
きっぱりそう言い放つ家康。
「で?それから?」
ひまりが渡り廊下で渡していたのは、政宗からの情報。ムスッとしながら家康はより一層ひまりを自分の方に引き寄せて、今はベビーピンク色に染まった唇が動くのをじっと待つ。
「えっと……怒らない?」
必殺うるうる瞳。
家康はうっ、と喉が詰まりそうになる。
(((撮影中に一体、何を!?)))
その会話が聞こえているのかいないのか、すっかり二人の世界に突入した二人を唖然と見守る視線。
カメラマンは苦笑いして、二人の笑顔が出る瞬間を今か今かと待ち構える。前の撮影した時とは、随分雰囲気が……いや、関係が変わったひまりと家康。
幼馴染であり、
同級生であり、
恋人同士になった今。
次はどんな二人になるのだろうと。