第248章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(35)時を繫ぐルージュ編
しかし……
触れ合っていた腕が少し動き、チョンと手と手の指先同士が今度は触れる。
「……それは、無理ですよ」
胸いっぱいに吸い込みたくなるような清々しい香りの中に、少しだけ混じる雨上がりのようなしっとりした香り。
裏表というより、天然の中に隠された大人の優しさ……それを秘めた三成らしい香りは副部長の鼻を擽り、胸までもくすぶる。
大きく跳ねた胸と一緒に、ピクリと反応して動いた頭。
(三成……くん)
「部屋に二人きり。書物で知識を得る時間に使うのではなく……私は……」
貴方を知る時間に使いたい。
甘い台詞に乗せて、
極上の笑みを贈った三成。
その台詞と微笑みに、
すっかり虜になった副部長。
指先がキュッと寄り、
重なった二つの手。
パシャパシャッ。
「良いね〜〜その表情!まさに胸きゅん!」
「……狡いわよ。私ばっかりは……なら……」
両膝を立て、半立ちに体勢で三成の耳に開いた手を添えた副部長。
今度は人を誘い込むような香り高いものが、三成の胸を騒がす。
「初デートは部屋にしてね」
色々、知って貰う準備してくるから。
「オッケー!良いショット貰った!」
少し余裕さえ感じれた声と小悪魔っぽい囁きに見事、三成はノックダウン。鼻を何故か押さえ、赤面してセットからフラフラとした足取りで出た。
「次!ひまりちゃんと家康くん、頼むよ?」
何で語尾にクエスチョンマーク?
ボソッと呟く家康だが「撮って貰おう!」嬉しそうに自分の手を引くひまりには到底かなわない。
背後の「2」のバルーンがバッチリ映るよう、二人は真ん中で向かい合わせで立つ。家康は反対向きの一人用ソファに乗っかり、腕の中にひまりを閉じ込める。