第248章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(35)時を繫ぐルージュ編
両思いでも、
まだ正式な恋人同士ではない二人。
コーラルピンクのリップを少し前に三成に塗って貰った副部長は視線を外して、ドギマギとしていると……
パシャッ。
「何だか初々しいね二人。初めての部屋デート……そんなイメージでリラックスしてくれ」
軽い口調で茶化したカメラマン。その声で益々緊張感が上がり、縫いぐるみを膝の上に乗せて顔をパタパタさせた時、フッと頭上に影が落ちる。
「……お顔が暑いのですか?」
「そ、そんなことないわっ///あ、でも照明は少し暑いかしらっ」
「クスッ。可笑しいですね?……ここは、部屋ですよ」
すっかりスイッチ?が、入った三成。右隣にいる副部長の隣に片膝を折って座り、長い足を片方だけ伸ばす。
グッと近くに座ったせいで、
腕同士が自然と触れ合う。
「初めての部屋デートとは、どのような感じでしょうか?」
「そうねっ///ちょうど今頃、弓乃と伊達くんがそんな感じじゃないかしらっ?(腕がぶつかって///)」
動揺する副部長と、
全く動じない三成。
夕方には店の手伝いが終わると弓乃から聞いていた副部長。話題を自分からすり替え、昼休憩の時にひまりからデートに遅行した理由などを聞いていた為、それを思い出してつい声を漏らし、クスリと笑う。
(今頃、伊達くんの部屋でしてそうね。色んなもの引っ張り出して、じっとしてはいなさそう)
一人で百面相する弓乃が浮かぶ。
まるで見えているかのように、その姿が脳裏に見え、声をあげて笑いそうになるのを、口の中を奥歯で噛むようにして堪えていると……熱い視線に気づき、副部長は顔を横に向けた。
やっとこちらに向きましたね。
言葉にしなくても、
澄んだ瞳がそう告げる。
「貴方と過ごす時間は……恐らくあっという間に過ぎてしまうのでしょうね」
「それは、三成くんが本に集中しちゃうからじゃない?部屋デートって言っても二人で読書して終わりそうね」
目を見ながらだとまともに返答出来ず、視線をあえてくまの縫いぐるみに落とした副部長。