第247章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(34)時が繫がるルージュ編
一気に忙しく動き出した時間。
「スタイリストさん、もう来るみたいだからね。それにしても……ストッキング破れるぐらい寝相悪かったかしら?」
「へっ///それは……」
「家康先輩も、わざわざコンタクト外されたのですか?」
「三成には関係な……っ!…熱っ」
ジュッ!
「あっ!ごめんねっ。アイロン挟んだままっ……大丈夫?」
ヘアアイロンを持っていた手を、
パッと後ろに引いたひまり。
家康の髪をストレートにしていた最中なのを忘れ、副部長の言葉に動揺して手元が狂ったのだ。
「徳川くんもカツラ被れば良いじゃない」
「神木が被ったヤツとか……嫌なんで」
そんな理由?呆れて渋い顔をする副部長の隣で三成はニコニコ。家康もスタイリストがヘアセットをした時と大違いで借りて来た猫のように今は大人しい。自分の背後で髪を一房、一房指でつまみヘアアイロンでセットするひまりの姿を鏡で盗み見ては、にやけそうな口元を必死に堪えていた。
「お待たせ!……っと!大方の準備は終わってたみたいね!メイクだけ直そうか?」
家康のヘアセットが整え終わったと同時に、スタイリストが現れ再び時間は早く進む。
「あれ?さっきとメイクが……」
「狐の花嫁メイクよ!この衣装に着替えた時、ひまりちゃん自分じゃないみたいって言ってたから!目尻にポイントメイクしてみたの!」
目尻から斜め上に引かれた赤い線。
それだけでも、グッとイメージは変わる。「大人っぽくて良いじゃない!」副部長に褒められ、ひまりは赤い線が入った目尻を下げるように笑う。
「……仕上げして貰うんで」
「私達、お邪魔虫は退散ね!」
「あ……コレ。ジャケットに仕舞ってた筈なんですけど……出しました?」
スタイリストから返事はノー。
「どうしたの?眉間に皺寄ってるよ?」
「……別に。それより薬」
中紅花に染まった唇。