第246章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(33)時が繫がるルージュ編
笑っていた筈なのに泣きたくなって、
本当に忙しい私。
でも……
振り返れば、鏡の中じゃなくてちゃんとそこに家康がいる。
腕を絡ませて体を寄せたら、何にも言わなくても背中に腕が回るとこ。家康の胸に頬を寄せれば、私の頭の上には軽い重みが乗るとこ。
ぎゅってしたら、
ぎゅって返してくれる。
幸せがいっぱい色んな所に隠れてて……
ぬくもりが身体中を包んでくれて……
「……ほんと。何で、俺の心……忙しくさせるワケ?」
「……クスッ。ほんと?何で?こんなに私の表情を忙しくさせるの?」
言葉を交わしたら、心が温まった。
早くしないといけないのに。
時間は止まらないし、
待ってはくれないのに。
デートの別れ際みたいに、幸せな余韻と離れたくない気持ちに取り込まれたような甘い空間の時間。
家康の愛情を、
いっぱい貰ったからかな?
家康とこのままずっとくっ付いていたい。まだ、この後も一緒にいるのに不思議な感じ。
「何か……離れたくないなって」
「……あんまり可愛いこと言うと、またソファに連れて行くけど」
「もうっ///すぐそうやっ……ンッ!」
トンッと軽く胸を叩いて、首を動かす。目が合うよりも口を尖らせるよりも先に、奪われた唇。
すぐ離れるのかと思ったら凄く長くて、息継ぎも少しもさせてくれない。今度はさっきと違う理由で胸を数回、ノックするように叩く。
でも、止めてくれなくて。
(家康も同じ気持ちなのかな……)
口数が少ない分。
(いっぱい伝えてくれる)
俺もって。
唇が離れた後、
私達は何故か照れ臭そうに笑った。
それは、
きっとお互いの想いが伝わったから。