第246章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(33)時が繫がるルージュ編
形が違ってもお互いを思う思いやりもあって感じて、一緒にいる時間の大切さも、繋がる方法も一つじゃないのを知って、心も体も満たされた今……
(このままで十分、幸せ。でも……)
必要なモノが絶対ある!とか、じゃないけど私はきっとこれからも、もっともっと家康のことが好きになると思う。それに、私のことももっと好きになって欲しい。
欲望とか願望じゃなくて、唯一当てはまる言葉があるとすれば……発見?かな。
見つけたい。
まだ知らない部分とか、新しいモノを二人でこの先もずっとずっと一緒にいれるように。
そう思ったら居ても立っても居られなくて、ウズウズして、擽ったくて……
笑顔が自然に溢れる。
「なら、見方?を変えてみる……のはどうかな?」
フード両端。そこを両手を使って指先できゅっと摘む。それから、軽く持ち上げて目だけ私は出すと、鏡に向かって笑いかけた。
「見方を変える?」
「そう!例えば、家康のその怪我!痛そうだけど……ふふっ!ん〜とね……ヒーローの証?とか?」
腰元に回っていた腕が少し緩くなって、何それ……って、私の頭の隣にあった顔が、家康の表情が、ちょっと呆れたような柔らかい笑顔に変わって、鏡の中で咲く。そしたら、私の表情も一段と明るくなって……
はにかんだ。
「だって、私を守ってくれた証でしょ?心配なのは変わらないけど…そう思うと、嬉しい。私の心もそう……傷つくこともあるけど……」
言葉をそこで止めた私。
あるけど……?
そう聞き返されて、動いた唇。
スローモーションのような遅い時間。
「幸せなのも忘れないで」
止まりそうなほど……
ゆっくりとしたテンポで……
私は鏡の中の家康にそう告げた。