第246章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(33)時が繫がるルージュ編
それでも目を閉じて鼻を高めに上げて、ツーンとしていると……「わあっ!」私は次の瞬間には短い声を上げる。突然、既に被っていた頭のフードがグイッと深く被されて目を開けても、視界は真っ暗に。
「……冗談。どんな表情でも俺の心臓……軽く止めるぐらい可愛いから。後、時々……鼓動を狂わすぐらい綺麗」
ひまりは。
視界が遮られて、何にも見えないからかな……。届くのは、あったかい背中越しのぬくもりと半分夢のような……耳の底で優しく囁かれてるような声。
「……もしかしたら、痛そうに見るから……痛いのかも」
(え……痛そうに?)
「大丈夫。そう言っても、心配させるだけだろうし、俺もひまりが大丈夫って言った所で多分、どっかで心配してる」
「家康……」
「何かあると真っ先に傷つけた、傷ついてる……そんな風にひまりの心を、無意識のうちに見てるのかも」
最後にそう告げた家康の声は、
しんみりとしたモノに変わっていた。
(……きっと、知らない所でいつも私のこと気にかけてくれてるんだろうな……)
家康の優しさはいつもそうだから。
フード被っているから真っ暗で。何にも家康の表情一つ見えなくて。でもね……ちゃんとその言葉と、態度や声や言葉や仕草。背中越しのぬくもりとか、鼻から息を吸い込む息遣いとか、何だろう……
全部から想いが伝わる。
その一つ一つが家康が、私に心を見せてくれている証なんだって。前から気づいていても、また今は少し違うことにも気づいて……
(今の私達に必要なモノって……何かな?)
暫くそれを考えた。