第244章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(31)時が繋がるルージュ編※R18
それを快く信康が引き受けると、ホッと安堵の息を吐きカメラマンと変更するポージングなど、念密な打ち合わせしていた……
その時。
ーー今、神木から話を……。
家康が現れた。
ーーこの撮影。ビルに上がる、広告看板用……だよね?
その問いかけに頷き……引き伸ばしが大きくなる分、顔の傷が目立ちメイクで補うのが少し困難なこと、戦国背景ならその辺りは違和感がないから敢えてその傷を活かした撮影にしようと考えたと、編集長は申し訳なさそうに詳しく事情を話す。
すると、
家康は途端に眉間にしわを寄せ……
ーー……俺の顔の傷より、ひまりの心の傷を気にして欲しいんだけど。
ボソッと呟く。
ーーひまりちゃんの心の傷?
そして少し躊躇った後、この傷は負った時の事をあまりひまりに思い出させたくないとだけ話した。毎朝、自分の顔を心配そうに見上げる瞳。早く怪我を治して安心させたい。その想いは口にしなかったが、家康はそれだと傷が治った後も、広告看板が上がっているクリスマス期間中、通学途中で目にすることになるからと。
ーーてっきり、メイクか画像修正で誤魔化すと思ってたんで。
ーー化粧品メーカーとしては、肌質にはこだわりたくてね。……そうか、ひまりちゃんも何か辛い目に合ったんだね。
その言動から何かあったことは悟った編集長。家康に知らなかったとはすまなかったと謝る。
ーー俺は別に……。ただ、この傷を見る度……強くなろうとするから……。
ふいに寂しさを感じたような、
どこかはっきりしない表情。
(……男としては甘えて欲しいのが本音……か)
一瞬だけ見せた家康の気持ちを振り返りながら、編集長はしみじみとした声で、昼休憩の出来事を話すと手の上に乗せていた顎を持ち上げる。
「俺もそれには心を打たれたからね。絡みのツーショットは無くして、現代ツーショットは家康くんに、戦国ツーショットは信康くんにお願いしたんだよ」
「え?でも、それなら最後は?三人で確か正面撮影ですよね?」
副部長が疑問符を浮かべると、編集長はただ良い提案を貰ったとだけ告げ、困ったような嬉しそうな……
「まぁ、撮影がはじまったらわかるよ」
曖昧な表情で笑った。