第244章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(31)時が繋がるルージュ編※R18
昼休憩の打ち合わせで、
スタイリストが提案したのは……
戦国時代の背景ならば、戦から帰って来た時に怪我をしていても違和感が無いため、現代モデルを信康にして、戦国モデルを家康にするという案だった。
ーーそれだと何か問題ありますか?
その案なら撮影時に傷があってもおかしくはない。折角もう一人のそっくりなモデルがいるならと……スタイリストは考えた。
ーー彼には最後の一枚だけをお願いするつもりだったからね……それに、うーん……どう思います?
ーーひまりちゃんの表情は家康くんだからこそ、出来栄えがあがると思っているのが率直な意見だ。
特に現代の「待ち合わせ」撮影はひまりそのものの笑顔が欲しいと渋る二人。
期待、ワクワク、ソワソワしながら待つ表情。そして会った時の幸せそうな笑顔。それは家康にしか出せないと編集長とカメラマンは、なかなか譲れないでいた。
ーー確か、傷は左の口端だったね?ツーショット撮影一枚目は、現代は右向きの横顔。戦国は左向きの横顔。傷なし、傷ありで両方とも家康くんでいけるが……問題は二枚目の絡み撮影。……アップで撮りたいからね。
ーー現代はピュアな雰囲気、戦国は濃厚な雰囲気のキスシーン。
当初は合わせ鏡の撮影後、次にそのまま絡みの撮影をいれる予定だった為、編集長は頭を抱え心の底から湧き出したように、長い溜息を吐く……
仮に信康を撮影にいれるとしても、流石にキスシーンは取り入れなくなる。プロのモデルでもない上、家康とひまりが恋人同士になったと聞いた今なら例え寸止めさえも踏み切れないでいた。
ーーショーウィンドウの中から仲良い二人の姿を目撃したからね。あれで、今回の撮影風景が脳内に舞い降りたも同然。いくらフリでも気分は良くないだろう。
話し合った結果、
一番の候補で上がったのはスタイリストの案件で、現代のキスシーンをやめ違うポージングを考えること。
ーーもうこんな時間!そろそろ戻って来る頃なので、先にひまりちゃんを上げて来ます!
ーー頼むよ。とりあえず彼がオッケーしてくれるかわからないからね。
スタイリストが去った後、タイミング良く現れた信康に編集長は早速ツーショット撮影も撮らせて貰えないかと頼む。