第244章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(31)時が繋がるルージュ編※R18
熱いのに冷や汗をかいてしまうぐらい、羞恥心とか恥じらいとか焦燥感とか……
もう色んな感情が突き抜けて押し寄せて……
涙が一気に溢れた。
「ちがっ……っ……」
何を言い訳しようとしてるのか、自分でもわからないぐらい。
『見られた』
そのことで真っ白な頭が更におかしくなって、完全にパニックを起こす。
(家康にもっ……見られたことなっ……自分で触ったことな、んてっ……一度もっ)
走ってるのか、フラついてるのか、歩いているのか、浮かんでいるのか、感覚も何にもわからなくなって、それでも扉のドアノブに向かって手を伸ばそうとした時……
「ひまりっ!!」
「…ち、がっ…はぁ、っ…はっ……今のはっ、ちがう…のっ……」
後ろから捕まったのは、左手首。
「んっ!?」
それだけで、ビクンッと大きく仰け反りそうな快感が走り……危うく舌を噛みかける。
捕まった手首を何とか振り解こうと、
腕を動かそうとした瞬間……
(……左手……)
さっき感じていた違和感。その正体がスッとその温もりから走り抜ける。
不慣れなヒールで転けそうになった私。それを助けてくれた時、正面から家康が引っ張ったのは……
ーー……ドジ
私の右手首。
さっきメイクルームで編み上げブーツの紐を踏みそうになって、後ろから助けて貰った時も……右手首だった。
ダンッ。
「……待ってよ。ただでさえ、綺麗で驚いてんのに……」
ーー……その格好。……綺麗で可愛い///
違う……
「その上……あんな可愛い姿みたら……っ……」
ーー……時々……ずっとこうやって腕の中に閉じ込めていたくなる。
似てる……
そして今、自分の腰元に回った片腕、扉に押し付けている肘が……さっきの撮影の時とは反対だと気づく。
私はゆっくりと、顔だけ動かす。
「さっきから、肌があ…つくて……身体が…おかしいのっ…」
体も心も同じように疼いた時。
愛しい人の名前を呼びながら、
赤い瞳を見上げていた。