第244章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(31)時が繋がるルージュ編※R18
スタジオ内___
家康が控え室で待機する中。副部長と三成は今度はどんな衣装で現れるのだろうかと、期待していると……
「ひまりちゃん!入りまーす」
ひまりが現れる。しかし、スタジオ入りするなりスタッフに急かされるように手を引かれ、セットの中に移動してしまい、二人は声をかけそびれた。スタッフは、ひまりにさっきと反対向きになるようにクリアガラスの板に左手をつけるように指示。
「こうですか?」
「さっきとポージングや目線は同じで良いから」
カメラマンに言われ頷くと、編集長には窓ガラスの前で「そろそろ戦から戻りそうな家康くんを待つ女の子をイメージして欲しい!」そう要望され、今度は気合いを入れたように、しっかりと頷く。
(さっきと反対向きだから、まるで鏡の中に入ったみたいな気分……)
しかしガラス越しに映るのは、さっきとは打って変わった姿。それに「待つ」という同じ状況でもさっきとは全く違う心境。そこに不思議な感覚を覚える。
ひまりの格好は、撮影した時に小道具として使われていた赤い着物。赤といってもピンクにも見えるそんな生地に白い小花が散りばめられ、帯はアクセントになるように目の色に合わせた琥珀色。黒髪のボブヘアーに雪のような肌が映えるよう、薄っすらとしたメイク。
そして五分ほど遅れスタジオ入りした信康の格好は、柄のない黒地の着物に月白の帯。そして片目だけコンタクトを入れ、赤い両瞳。髪色はまるで月のような家康と同色だが、髪型はカツラを着用前の信康と同じサラサラヘアだった。
二人が会話をする暇も無く撮影が開始。パシャパシャとまた嵐のように周囲でシャッターを切る音。