第242章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(29)時が繋がるルージュ編
次の撮影に向けてセットが切り替わり、
ガラッと変化を遂げてゆく。
時世の移り変わり。
まさに時間が逆走したような……
和の雰囲気。
畳を数人の男性スタッフが運び込み、ドレッサーが赤い鏡台に。ローテーブルとクッションはなくなり、代わりに朱塗りの行燈、 屏風式の衣桁が置かれ女性スタッフがそこに華やかな赤い着物を掛けている。
(ふーん。鏡と縫いぐるみで繋がり感を出すとか?)
くまの縫いぐるみは、そのまま。
ひまりがメイクルームに行っている間に、編集長が熱弁していたコンセプトを一応小耳には挟んでいた俺はパイプ椅子を反対向きに座り、頬杖をついて今度は割と興味を持ちながら観察。
(戦国から江戸時代頃……)
家具の素材と雰囲気で、
おおよその時代を予想。
「次は着物の衣装っぽいわね!ひまりならどっちも似合いそう」
「それは、時先輩もですよ。道着姿を……久々に見てみたいです」
「道着は…もう、アレだけど……お正月に毎年着物を着ているから、もし良かったら……///」
「ぜひ、ご一緒させて下さい。それならば、初詣は秀吉先輩のご実家にでも……」
時どころか地球がひっくり返りそうな程、胡散臭い笑顔を浮かべた三成。ひまり曰く天使の笑顔……らしいけど……俺の隣で振りまくのは勘弁して欲しい。
まだクリスマスも来てない内に初詣の話で盛り上がる二人。それにウンザリしつつ、適当に時間を潰していると……
(……電話?誰から……)
上着から伝わってきた振動。
スタジオから出て携帯を取り出し、ディスプレイ画面を見て壁に背中をあてる。
「……何?初デートでもすっぽかされた?」
「ったく。開口一番がそれかよ。……まぁ、あながち外れてねえけどな」
冗談で言ったつもりが、的中したらしい。