第8章 先輩「豊臣秀吉」
私は玄関で一旦靴に履き替える前に、
念の為、先に家康の下駄箱を確認する。
ゆっくり開けると、
バサバサッ……
落ちた大量のラブレター。
(わぁっ!……ごめんなさい〜っ)
新学期早々。
相変わらずモテる家康。
近寄り難い雰囲気のせいで、告白は直接じゃなくて圧倒的に手紙が多いって、周りの子達からは聞いてたけど……
この量は想像以上かも。
私は急いで拾うと、下駄箱の中に戻す。
(そう言えば、今朝の占いで……)
魚座のラッキーアイテム、手紙。
ちょっと期待しながら、自分の下駄箱を開ける。
けど、
……空っぽ。
(ちょっと、期待したんだけどなぁ〜)
少し残念に思いながら、靴を履き替える。
気づけばもう、下校時間。
どうしよう……
織田先生に一言、言ってからにすれば良かったかな。
家康の靴なかったから、裏庭にはいると思うけど……
鞄は私が持っているし。
まさか帰ったりしてないよね?
う〜〜ん。
「何、一人で百面相してるんだ?」
「あっ、秀吉先輩!」
ウロウロしながら玄関先で悩んでいる私に、声を掛けてくれたのは秀吉先輩。
手には大きな段ボールを抱えている。
話を聞くと、何でも明日の部活見学の準備をさっきまでしていたみたいで……段ボールの中身を覗けば、道具とか胴着が沢山入っていた。
「部の新予算を立てるから、織田先生に古くなった物を持ってくるよう、頼まれてな」
「さすが、弓道部部長!頼りにされてますね!」
そう言って笑うと、先輩に煽てても何も出ないぞと、人差し指で軽くおでこを突かれる。
「で?お前は何してたんだ?」
私は先輩に事情を話す。
家康を呼びに裏庭に向かう所で。
下校時間が過ぎたから、先に織田先生にそれを伝えに行こうか悩んでいた事を。