第241章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(28)時が繋がるルージュ編
三人はそのままスタジオに。
そして私は早速ヘアメイクをしに、メイクルームへ移動。壁の半分ぐらいが鏡になっているドレッサーの前に座ると、スタイリストさんは大きなメイクボックスを開いて……
鏡越しに明るい声で話しかけくれる。
「まずは、今風の女の子な感じで仕上げていくわね!デート前の朝だからメイクも薄くして……」
「はい!お願いします!」
前回の撮影と同じスタイリストさんで、嬉しくて思わず大きめの声で返事。人見知りするほうではないけど、やっぱり見知った人のほうが気軽に質問したり話せるから安心。
(うーん。デート前の女の子かぁ……どんな表情したら良いのかな?期待でわくわくしている感じかな?それともドキドキ?)
最初のピンショットはベビーピンク、コーラルピンク、ローズピンクのスティックタイプのルージュ。
そして次は真紅、紅赤、淡紅の丸いフォルムの筆タイプのルージュ。
前回も撮影した六色だけど、美容雑誌の特集用に新たに撮影。
そして最後にツーショット撮影をするのは、十二月に発表する予定の限定色『中紅花〜Bright pink』のルージュ。明るい赤みがあるピンク色だって編集長さんは言っていた。
(最後の撮影は特に力を入れたいって、編集長さん凄く張り切ってたから、私も出来るだけ要望に応えれるように頑張らないと!)
つい無意識にガッツポーズをしていたみたいで、スタイリストさんがチーク筆を持ったまま、ふふっと笑い声を漏らす。「動いてすいません!」慌てて謝ると「いいの、いいのっ!」と、スタイリストさんは鏡の中の私に微笑んでくれて……
「ひまりちゃんは今回のコンセプトにぴったりね!」
「コンセプト……ですか?」
「そう今回は、時を越えるというより『時を繫ぐ』がテーマみたいだよ」
手を止めずに動かしながら、
丁寧に教えてくれた。