第241章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(28)時が繋がるルージュ編
雑誌撮影日___
日曜日の朝。三成くんと副部長とは駅前で待ち合わせをして、そこからスタジオがある市内に移動。前回の撮影時は織田先生と明智先生の車で移動したから、場所がうろ覚えで編集長さんに頼んでメールで住所を送って貰い、携帯の画面と睨めっこしていると……
「大体は、覚えてる。……行くよ」
「え?ちょ、ちょっと待って……携帯返してよーっ」
私の手から携帯がスッと消える。代わりに家康の手がその手に絡まり、そのまま連れて行かれるように脚が自然と動く。
「三成くんも前に撮影したのよね?ぼかしが入ってるけど、あの背中合わせのがそうなんでしょ?」
「はい。しかし移動中の間、本を読んでいまして。気がついたらスタジオの中にいましたので」
「三成くんらしいわね」
クスリと笑う副部長の声。
ほんわかした二人の会話を背後で聞き……
「ま、待って!二人と離れちゃう」
「その為に早く歩いてんの」
(???)
家康がスタスタと長い脚を動かしてどんどん歩いていくから、いつの間にか背後の二人の会話もそれっきり聞こえなくなってしまった。
辿り着いた三階建てのビル前。
「あ!あそこだったよね!」
外観を見て指をさす。見た目は変哲のない普通のビル。ただ、隣にお洒落な喫茶店があったことだけはしっかり覚えていた。クルッと横を向いて家康に流石だね!と、笑いかける。すると、ちょっと拗ねたように口を尖らせて……
三成くんと隣同士で座ったから横を向きたくなかったとか、前を走る織田先生の車を目で追ってたから道も嫌でも覚えたとか、ブツブツ。
(確か、明智先生の車には三成くんと家康だけだったよね?あんまり、会話なかったのかな?)
「何か見学の私までドキドキしてきたわ!さぁ!行くわよっ!」
テンション高めの副部長に背中を押されながら、自動扉をくぐり抜けた。