第241章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(28)時が繋がるルージュ編
はらりはらりと舞い上がる、
緋いの紅葉。
赤い鳥居を潜り、階段を登りきった所に構えた大きな神門。その入口の両脇に一対で向き合った狛犬。その石像の上に一つずつ影が気だるそうに乗り、尻尾をふさふさと揺らした。
「今日は、見張りついてないな」
「なに信康。私服で行ったの?」
白いスニーカー。その声を聞き、石段の上でつま先を揃えるようにして止まる。
「今日は石碑の様子を見に行っただけだからね。それより、じじ様の容態は?」
信康が尋ねれば翠玉と天鏡は顔を合わせ、値打ちを持たせたように首をゆっくりと振るが、あとは自分たちが見ているから明日から学校に登校するように促す。
「ほら、お前も普通にさ……」
「この前の件は落ち着いたんだろう?それに、どっちみちあの眼鏡に疑われるなら、扉を蹴り飛ばしていいとこ取りしとけば…………」
「まだだよ……まだ動くのは早い。通報した事で今は、俺よりも彼女を調べているだろうから………それより……「狐珠」の紅がどこに仕舞われているのかを教えてくれ」
近々、使う予定だからね。
二つの影が暗闇に消えた時。
静寂を破るように、
着信音が辺りに鳴り響く。
「はい……日曜日ですね……大丈夫です。ただ、二人には…………お願いします」
携帯切ると握っていた手をそのままジャケットのポケットに入れ、境内にある祠まで脚に任せてゆっくり歩を運び……
扉を開けると前髪をサッとかきあげ……
「まだ、三分咲きぐらいか……」
ーーい、えやす……
ーーまだ。…ひまりが足りない
昼間の光景が掻き消されるまで、
暫くの間、翡翠の瞳で鏡の中を見つめた。