第240章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(27)時が繋がるルージュ編
余りの呆気なさにぽつんと取り残された気がしてならなかったが、ひまりは気にせず家康のブレザーをクイクイッと引っ張り、石碑の前に移動する。
二人で久々の外での昼食。
十一月上旬の今。
日差しが出て入れば、もう少し温かみもあっただろうが生憎の曇り空。
しかし、「早くっ!」裾端を掴むひまりはご機嫌で晴れ空模様。それを見れば、気乗りしない家康もたちまち表情が柔らぐ。
お弁当箱を開け、石碑に背中を預けて横並びで座った二人。
「くしゅんっ……」
「だから、寒いって言って……ほら、ここ。……おいで」
ずびっ。
くしゃみをして鼻をすすれば家康は長い脚の間に隙間を作り、片脚だけ伸ばすと膝の上あたりをポンポンと叩く。いつもならそう迷わず、恥らいながらも腰を上げて大人しく座りにいくひまり。しかしその体勢だと家康が食べにくい上、怪我の負担にもなってしまうと遠慮するが……
「……来ないと、ブレザー脱ぐ羽目になるんだけど」
「それはだめっ……なら…お邪魔しま…す?…」
おずおずと横向きにちょこんと座れば、腰元に腕がまわり更に二人の身体は密着。
「わぁ!……これだと、ますます食べにくいよっ」
「……ひまりカイロ。……食べ終わったらデザートになるけど」
もうっ///と、言いながらもひまりは家康のつんと鼻筋の通った端麗な横顔を見ながら……今朝の築城と弓乃の会話を振り返り、
(私も顔で好きになった訳じゃないけど……でもっ///格好良いのは……)
「何?じっと見て……」
ぱっと紅葉のように顔を赤くして首をブンブン横に振り、もぐもぐと口におかずを運んだ。
「あ!そう言えば昨日の夜、編集長さんから電話あったよ!家康にも掛けたけど出なかったって……」
「……予備校の帰りに、ちょっと寄る所があったから」
すっかり折り返すのを忘れていたと、家康は大して気にも留めていない口振り。「で、何て?」一応どんな用件だったかを聞けば、日時と撮影場所が前と同じスタジオだという連絡だったとひまりは話す。