第240章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(27)時が繋がるルージュ編
すると少し間をとって、
「いや、実は特に理由はないんだ。ただ、生徒でもないのに校舎の中に居るのは、少し落ち着かなくてね」
先日、信長から家康が怪我を負ったと聞き、見舞いがてら世間話をしにきただけだと話す佐助。眼鏡を中指でグッと押し付ければ、
スカートがひらりと揺れ……
「でもその格好なら、校内に居ても全然っ違和感ないと思うよっ!」
「なら、今度はぜひ制服を着用してお邪魔するよ」
「えっ!?佐助くんも戦国学園の卒業生なのっ!?」
「残念ながら……それは、答えれない」
えーっ!気になる!興味津々に食いつくひまりに、佐助は勿体ぶったようにただ制服だけは持っていると答え、今度着てくるよと冗談か本気かわからない表情を浮かべた。
「家康とお昼食べながら、その話題で盛り上がらないと!どっちかなぁ〜?ふふっ……」
早く来ないかな〜?
聞いていると思わず笑みが浮ぶほどかわいらしい声で、ひまりは曲がり角を見つめる。
そんな二人の会話を息を殺しながら聞き、気づかれないように石碑裏で様子を伺っていた信康。
(徳川も来るのか……この様子だと昼休み中、ここから動けそうにないね)
二人の待ち人が家康で、ここで昼食を取るつもりなのがひまりが大事そうに抱えた弁当箱が物語っている。
それから数分後……
「え!?佐助くん、もう帰っちゃうの??」
「……一体、何しに来たワケ?」
「ちょっと用事を思い出してね。たまには外でゆっくり昼食を取るのも、情緒があって良いと思わないかい?」
情緒って……この時期は寒いだけど、ぶつくさ文句を言う家康。
「ほら、折角だから久々に石碑で食べよう!最近は、昼休み教室ばっかりだったし!」
「石碑は君たちの原点。存分に愛を育んでくれ!」
キランッ!眼鏡のフレームが光るのが早いか、立ち去るのが早いか……佐助は二人を残してサッと姿を消した。