第240章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(27)時が繋がるルージュ編
昼休み、石碑前___
冬支度をはじめた芝生。春から秋にかけて伸び、成長が止まり、葉の色が所々に茶色味がかかる。あと数週間もすれば休眠期に入り……枯れてゆく。
(亀裂が少し進んだか……)
その上を白いスニーカーが少し迷うような足取りで踏み歩き、石碑の手前で止まった。
『約束の地』
亀裂の入ったヒビ割れからキラリと光が見え、顔を近づけて前髪で隠れた瞳で覗き込もうとしたタイミングで……
「でね……………どこを………」
「………そうか………」
こっちに向かってくる足音と声。
(…っ……奥に隠れる時間は……なら……)
それが誰かわかり、咄嗟に身体を小さくして石碑の裏側に座り身を隠した。
やってきたのは制服姿のひまりと、チェックシャツにセーターを重ね着して清潔感あるジーンズを履き、研究医の白衣を羽織った佐助。
しかし、二人は……
石碑の前ではなく校舎側のほうに身体を向けると、声がぎりぎり拾えるかぐらいの距離で立ち止まる。
「それにしても、ビックリしたよ!佐助くんが教室に来たからっ!」
「急に天井から降りて来たほうが、普通は驚く所だよ。……ひまりさん」
「ふふっ、そうだねっ!何か、いっつも神出鬼没だったから慣れちゃって!」
ひまりは佐助と初めて出会った時やアドバイスを貰っていた時の状況を思い出して、今は普通に訪ねてくるほうが驚くようになってしまったと話すと、明るい声で笑う。
「俺も、春にここで二人のキスシーンを見た時は衝撃だったよ。石碑の裏から出るに出れなかった」
「あ、あれはキスシーンじゃなくて……家康が寝惚けたフリして///……そう言えば……遅いね?」
この裏庭に続く校舎の曲がり角。
お弁当袋を二つ抱えたひまりは誰かがそこから現れるのを待つように視線を向け、自分達をこの場に呼んだ理由を尋ねる。