第238章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(25)時が繋がるルージュ編
無駄な怪我を負うこともなく。ひまりも早く助けることが出来ただろう。
家康もその辺りは痛感しているのか、口を一文字に結ぶと俺とは距離を取り自分は門フェンスの柱の部分に背中を預ける。息を吐きながらゆっくり頭を下げ、月明かりに照らさた髪を風に靡かせた。
容赦無い夜風を浴び、俺が何故そんな質問をしたのか理解したのか……
「……通報したの神木ですね」
「ほぉ……。心当たりがあるようだな」
「ひまりが羽織っていた俺のブレザー。それを、空き教室前で拾ったのはあいつです」
俺と教室で別れた後の状況を家康は説明。居場所を探している最中に、背後から信康に呼び止められひまりの身に何かがあった事を悟り、真っしぐらに空き教室に向かった事を話す。
「空き教室に俺が向かったのを知っていたのは、神木しかいない」
「成る程。あの後、そんなやり取りがあったか」
俺は顎に手を添え、
まず結果から述べる。
通報したのは、間違いなく信康だと。
佐助は警察に、「どの生徒が通報したかを学校側も把握しておきたい」とか何とか適当な理由を並べ問い合わせ、番号の情報を入手して割り出していた。
「警察はあるシステムで番号を突き止めれたが、信康は匿名で尚且つ番号が表示されない設定で電話を掛けていた。……貴様は、どう思う?」
「つまり……神木が何故、わざわざ身元がバレない方法で通報したか?……って、ことですか?」
「あの他校生の奴らとは、全くの無関係。それは既に調べがついている。しかし、貴様らの状況は把握していた筈だ。……何故、助けずに通報したか」
「単に臆病だっただけじゃないの?気になって俺の後を追ってきたが、扉越しに様子を伺い、中に入る勇気がないから通報した。番号も、あとあと関わりたくないからとか」
如何にもひ弱そうだし。
家康は一応自分なりの意見を話すが、大して興味ないと言った口振り。