第238章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(25)時が繋がるルージュ編
家康の父親から、
ひまりの家にいる事を聞き……
早速向かう。
「織田先生!?」
「げっ!?」
俺を見るなりあからさまに嫌な顔を浮かべた家康。ブツブツ文句を言いだす前に、横に張った形の良い耳を引っ張り外に出るように促す。
「貴様が勝手に負った怪我など俺は知らん。……と、言いたい所だが教師として容態の確認だ」
「容態見に来て何で外に……っ!!」
「その好色な目つきを見れば、調子が良いのは一目瞭然だからな」
ニヤリと笑い頬を心なしか染めたひまりに視線を流せば、目が合うのと同時に頬に手を添え、気まずそうに俺から目線を外す様子が伺える。
(当たりか……懲りないヤツだ)
更に指に力を入れ、「いっ!!」靴を履いた家康の耳を強めに引っ張り……そのまま外に引きずり出すと、首だけ動かし玄関先で恥ずかしいそうに立ち尽くしているひまりに、母親達が夕飯の支度をしていた事を告げる。ならば自分も手伝いに行くと言い同様に外に出ると、戸締りもせずにパタパタと二軒先へと走って行き……
その後ろ姿が消えると、
カシャンッ……。
俺は玄関前にある門のフェンスに体重を預け、掴んでいた耳から指を離す。
「貴様、誰が通報したか知っているか?」
開口一番にそう問いかけた。
「藪から棒に何ですか……。俺は知りませんし、聞いてもいません。……ってか、てっきりあんただと……っ……先生かと思っていましたけど」
話の途中で視線を突き刺せば、
慌ててそっぽを向き言い直した家康。
「俺は、自分で見極め判断する。状況を把握していない内から組織など呼ばぬ」
「人には突っ走るなとか言っときながら、自分はそれですか」
「貴様のように、感情に任せた行動は取らんからな」
普段ならば、冷静な判断と行動を取れる能力を持ち合わせている家康。空き教室に向かう前に、俺にしろ誰かしらに一報告げて行けば早期解決に繋がったであろう。