第52章 風待ち月(1)
(ひまり視点)
大きな相合傘の下に、
書かれた私達の名前。
黒板に『目撃!二人の相合傘』
「すっげー、引っ付いてラブラブしてたって聞いたぜ」
「……普通に歩いてただけだし」
(もしかして!昨日のこと?)
感じの悪い笑みを浮かべて、家康の肩に手を置く三人に、私は横から
「昨日は、私がうっかり傘忘れてっ!家康に入れて貰っただけだよ///」
だからそんなんじゃないと、訴えた。
私達な幼馴染でご近所だし、毎日ほぼ一緒に登下校しているだけだって。
「徳川、姫はそう言ってるけど?」
「お前はどうなんだよ?」
「……何が言いたいの?」
家康は、自分より目線の高い三人を見上げ不機嫌そうな声を出す。
「お前はただの……」
真ん前に居た一番背の高い子に、何か耳打ちされた家康は、途端に顔を真っ赤に染め肩に置かれた手を振り払った。
「そ、そんなんじゃないし!///」
家康は三人から黒板消しを掴むと、必死に手を伸ばして消し始めるのを見て、私もそれに続く。
「ごめんね?私が傘忘れたりしたから……」
「っとに、ひまりのせいだし」
家康は背伸びしてもくもくと、上の方の字を消す。そんなに私と背が変わらないのに。
私が届く所以外の文字を、ブツブツと文句言いながら必死に黒板消しを動かしていて……。
(何か可愛いかも)
滅多に見ない姿に、思わず笑顔が溢れた。