第236章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(23)時が繋がるルージュ編
店員が飲み物を運んでくると、
いよいよ、話が本題に入り……
「今は、カメラマンやスタッフ達と打ち合わせ段階。……出来れば『和と洋』その両方を融合したカット撮影をしたいと考えている」
編集長は今まさに撮影の鮮明なイメージを掴もうと、衣装探しに休む暇もなく時間を使い飛び回っている最中。
「あ!だから、ドレスショップにいたんですか?」
「あの店に「kazumi」ってブランド名を近々立ち上げる予定の、腕の良いスタッフが居ると聞きいてね。着物もオーダー出来ないか頼みに伺ったんだが、生憎の不在」
何故、あの場に編集長が居たのか不思議に思っていたひまり。ショーウィンドウの中に居た理由が、その腕の良いスタッフが仕立てたドレスを間近で見る為だった事を知り、納得したようにうんうんと頷く。
「彼女は今、クリスマス納期のドレスのオーダーが複数入っていて、生地探しで各地を回っているそうだ。明日には戻るらしい」
本来は着物ドレスのオーダーは受け付けていない『princess story』。しかし、電話でのやり取りで今回は特別に引き受けてくれることになり、一週間ほどで仕上がる予定だと編集長は話すと……
コーヒーを一口、流し込む。
「君達に連絡をして、またイメージモデルを引き受けて貰えないか訪ねる矢先だった。本物に驚いたよ。……まさか二人が、そんな関係になっていたとはね」
含みのある言い方で軽くウィンクして、家康とひまりを冷やかす。恋人関係になっているなら尚更、撮影は捗ると考えた編集長。今回は前よりも濃厚な絡みを入れたい所。
編集長の隣で肩肘を付き、静かに話を聞いていた家康。前に座るひまりに視線を向ければ、ばっちり目が合い……
(も、もしかしてキスしてたの見られてたのかなっ///)
(……お陰様で)
お互い気恥ずかしそうに、
口に飲み物を運んだ。