第236章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(23)時が繋がるルージュ編
カランカランッ。
白い木製扉。
優しいベルの音を奏で、ゆっくり開く。
「いらっしゃいませ!三名様で宜しかったでしょうか?」
カフェの店内もようやく席が空きはじめ、三成と副部長もカップル席から、通常席に移動。目立つのは避けたいと考えた家康。落ち着いて話ができる席を店員に頼めば、こちらです!と、快く案内して貰う、五人はパーテーションで仕切られた角の席に腰掛けた。
そしてそれぞれ注文を済ますと、
編集長の話に静かに耳を傾けた。
『時を越えるルージュ』
広告看板がビルに飾られてから、まだ二日。しかし、ファッション雑誌の何社かには少し前から取り上げられ、クリスマス時期が近づいた今月、鰻登りのように予約注文が殺到。ついにはCM撮影の話まで持ち上がる中、某化粧品メーカーの広告を担当している編集長はある企画を進めていたのだ。
「目玉として和の雰囲気、洋の雰囲気を融合させた限定パッケージで新色を売り出す。……これを、見てくれないか?」
スーツの胸ポケットからある物を取り出すと、編集長はコトリと置く。
机の上に乗った、限定ルージュ。
「「可愛い〜」」
それを見て隣同士に座っていたひまりと副部長は手を取り合い歓喜の声を上げ、年頃の女の子らしく目を輝かせる。二人の視線は、もうルージュに釘付け。
一見、和のイメージが強い猪口形の白い容器。小さな丸みがある杯のような入れ物だが、蓋の部分はクリスタル素材になり、大きな花模様が描かれて、その真ん中に、時計の文字盤。
二つを合わせると手毬を連想するような形になり、あらゆる年齢層の女性の心を鷲掴みする。そんな魅力が詰まったパッケージだった。
「気に入ったかい?」
「はい!お姫様の宝石箱みたい。すっごく綺麗で可愛いです!」
飾らない率直な意見を言うひまりに、編集長は「それなら、良かった」と、少し得意げな大人の笑みを浮かべる。