第235章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(22)時が繋がるルージュ編
ファブリックのカラーが薄いパープルで優しい印象の二人掛けソファー。重厚感がある存在感をもちつつ、フレームのナチュラルな色合いと木製アームならではの圧迫感がないデザインが、くつろぎをテーマにした空間を創り出していた。
取り敢えず密着しすぎないよう、握りこぶし二つ分ぐらいの隙間を開け、ちょこんと座った副部長。
「まるで個室のようですね」
「ちょっと区切ってあるけど、べ、別に扉がある訳じゃないからっ」
三成の「個室」という言葉に敏感に反応してしまい、長い髪を無意識に何度も耳にかけ直しては、黒目をうろうろ動かす。
(大丈夫!三成くんはきっと、カップルシートには気づいていないはず)
紅茶を楽しみながらいつも通り他愛の話をするだけ。そう頭に入れ、胸を押さえ一度だけ深呼吸。変に意識をしないように心掛け……
「オススメは、柑橘系の香りがするアールグレイなんだけど……ここの茶葉ストレートでも美味しくて」
どれにする?
さり気なくメニュー表を見せ、副部長は三成に尋ねる。すると、何を思ったのか三成は急に肩を引き寄せ……
「時先輩と同じもので、お願いします」
にっこりと至近距離で、
エンジェルスマイルを降臨。
「み、三成くん!肩っ///」
普段あまり取り乱すことがない副部長。流石に、この突拍子も無いスキンシップには動揺して、顔を物凄い速さで離す。
「え?こうゆう事をする場ではないのですか?あそこに書いてあったのですが……」
三成は全く悪びれのないにこにこ顔で、ローテーブルの端に視線を向ける。そこには、ケーキ型の女子ウケ抜群のメモスタンドが置かれ……
(ご親切にどうも///)
副部長は居た堪れず、
メニュー表で顔を覆い隠す。
『カップルシート♡手を繋ぐのもあり、肩を抱いて密着するのもあり!二人だけの空間をご提供!』
ばっちりカップルシートについて、書かれていた。