第235章 天邪鬼の愛〜中紅花〜(22)時が繋がるルージュ編
ドレスショップの近くにある、
駅前の小さなカフェ。
ショーケースの中には可愛らしい自家製チョコレートや焼き菓子たちが、行儀良く並べられ……穏やかな時間が流れる店内にはお茶をしながら、ゆったりとした午後の時間を楽しむ女性達で、客席は埋まっていた。
カランカランッ。
おとぎ話に出てくるような白い木製扉のノブを回して、満席だとは知らずに店内に入ってきたのは……
「いらっしゃいませ!お客様、二名様でしょうか?只今、普通席が満席でして……奥の席でも宜しいでしょうか?」
「流石、人気店ね。三成くん、何処でも良いかしら?」
「はい。私は構いません」
文化祭帰りの、
副部長と三成の二人だった。
「しかし、宜しかったのですか?やはりクラスの皆様とご一緒に、打ち上げに行かれたほうが……」
「良いの良いの。この前、体育祭の打ち上げをしたばかりだしね。……それとも迷惑だった?」
「い、いえ!……迷惑なんて滅相もございません!」
光栄です。と微笑む三成の隣で、副部長は安心したように口の両端をキュッと持ち上げ、長い髪をサラサラと手で流す。
「三成くんのお陰で総合優勝出来たも同然なんだから。せめて、紅茶ぐらい奢らせて」
「こちらのお席になります!後でご注文に伺いますので」
「えっ!?ここって!!」
店員からメニュー表を受け取った副部長は、驚いたように目を見開く。
白いフリルのエプロンを付けた店員に案内されたのは、駅前の風景を見渡せる窓際のシート席。他の席とは壁で区切られ、ちょっとした個室のような空間になっている。
まさに周りを気にせず、二人だけの時間を楽しめます!が、売りの……
言わば、カップルシート。